キリンのエントリーシート(メーカー)

#10【26年卒】本選考 ⇨ 通過
男性・東京大学・理系
職種:基礎研究コース

現在行っている研究の全体像と社会的意義を教えてください。(600字以内)

がん細胞を光らせ、転移、増殖の仕組みを視覚的に解明する研究をしている。従来の研究では、発光方法として蛍光が用いられてきた。しかし、蛍光は発光時間が短く、生体内に存在する他の光が混在し、正確な観察が難しい場合がある。そこで、私の研究では、発光時間が長く他の光と区別しやすいリン光を採用した。がん細胞のタンパク質に結合する抗体とリン光を発する金属分子を結合させ、この化合物をがん細胞に添加し、顕微鏡でリン光を観察する。この手法により、従来の蛍光では見逃していた細胞内の現象を、より詳細に捉えることが可能になる。
これまでの研究で、私はがん細胞に特異的に結合する抗体を作成し、その抗体ががん細胞の特定のタンパク質と結合することを確認した。現在は、この抗体とリン光を発する金属分子を結合させ、観察系の確立を進めている。さらに、抗体の種類を変えることで、異なるタンパク質をターゲットにして観察することも可能だ。これにより、生体内の多様なタンパク質や機能の解明にも応用できると考えている。本研究が進展すれば、がん研究のみならず、蛍光を用いたタンパク質研究の多くに革新をもたらす可能性がある。最終的には、生体内でのタンパク質の動態や機能の理解が深まり、がん治療の新たな発見や、ひいては寿命の延伸への寄与を目指している。研究の過程で得た知見が多くの生化学分野に応用できるため、広範な社会的意義を持つと確信している。

これまでの研究の中で、最も困難だった技術的な課題を教えてください。その課題をどう乗り越えたかと、乗り越えられた理由を教えてください。(500字以内)

私の研究で最も困難だった技術的課題は、リン光を発する特殊な金属分子の実験手法を確立したことだ。無機化学系の共同研究先にて開発されたこの分子は、生物系の私の研究室ではこれまで扱ったことがなく、知見のある人もいなかったため、この新しい金属分子を使った実験手法をゼロから構築する必要があった。特に抗体と金属分子を結合させ、その結合を確認する実験手法が難題だった。

最初は担当教官の指示に従って実験を進めたが、再現性のある結果が得られず、研究が停滞した。この問題を解決するために、この実験の原理を正確に理解し、過去の実験での原理を用いた実験手法を応用できないか検討し、研究室のメンバーと議論を重ねた。さらに実際に金属分子を作成した共同研究先の人と連絡を取り合い、最適な実験方法を模索した。最終的には、自分の考案した新しい実験手法が最適な手法と担当教官から評価され、現在実行している。

この課題を乗り越えられたのは、従来の方法に固執せず柔軟に他者の意見や他の実験手法を取り入れる姿勢を持っていたこと、そして新しいアイデアを生み出すために、研究課題をより俯瞰的な視点で捉えたことが大きな要因だったと考えている。

キリングループで興味のある業務とチャレンジしたいことを教えてください。(400字以内)

食と医の中間に位置するヘルスサイエンス領域に興味があり、人間が本来持つ力を活用した予防治療を支援する免疫ケア商品の開発に取り組みたい。これらの商品は、消費者にとって身近で購入しやすく日常生活に取り入れやすい一方で、即効性がなく、生活に必須な食品ではないため定着が難しいという課題がある。この課題を解決するため、薬のような即効性を持たせることや、客観的な数値によって効果を実感しやすくする要素を取り入れ、短期間で効果を感じられる製品の開発を目指したい。
また、貴社の製品を消費者にとって欠かせない存在にすることを目標に、無理なく日常生活に取り入れられ、長期的な健康維持に貢献する商品の研究開発を行いたいと考えている。これにより、疾病予防に貢献し、社会全体に大きなインパクトを与えると信じている。高齢化が進行する現代社会において、予防医療の視点から社会課題の解決に貢献できる存在になりたいと考えている。